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夫婦どちらかが倒れたら家計と生活はどうなる?入院シミュレーション

この記事の要点

  • 医療費そのものは高額療養費制度により月の自己負担に上限がある一方、収入の減少と家事の外注費には上限がありません。
  • 会社員は一般に傷病手当金で額面の約3分の2が支給されるとされますが、支給までのタイムラグを埋めるのは手元の現金です。
  • 共働き世帯の本当のリスクは、収入断絶と家事・育児の崩壊が同時に起きること。この二つを合わせて試算する必要があります。
  • 1か月の入院で世帯収支は数十万円規模で動き得るというのが一般的な目安。ただし健康保険や勤務先の制度で大きく変わります。
  • 備えの優先順位は現金→情報共有→体制→保険の順で考えるのが一般的。保険の見直しは最後です。
  • この試算は健康なうちにしかできません。具体的な判断は加入する健康保険や勤務先、FPなど専門家への確認を。
共働き世帯が本当に恐れるべきは医療費ではなく、収入と家事が同時に止まることです。

「考えたくないこと」ほど、静かに数字にしておく

共働きの家計は、二つの収入と二人の労働で回る精巧なシフト制です。だからこそ「どちらかが倒れたら」という想像は、意識の外に置かれがちです。考えないのは薄情だからではなく、考えると先が見えなくなるからでしょう。

けれど、この不安の正体の多くは情報の不足です。防災リュックは用意していても、「配偶者が明日から1か月入院する」という医療有事のシミュレーションは白紙のまま——そんな世帯は少なくありません。倒れたときに何が止まり、いくら動くのか。数字にしてしまえば、漠然とした恐れは「対処可能な課題の集合」に変わります。

本稿では、収入・支出・家事の三つの面から、入院という有事を落ち着いて試算していきます。

収入はどう変わるか——「約3分の2」とタイムラグ

会社員や公務員が病気やけがで働けなくなった場合、一般に健康保険から傷病手当金が支給されるとされます。金額は給与(標準報酬)の約3分の2が目安で、支給期間は通算1年6か月までとされています。つまり収入はゼロにはなりませんが、額面の約3分の1が消える計算です。

注意したいのは、この数字だけでは見えない部分です。

  • 支給開始には一般に連続3日間の待期期間があり、申請から振込までにも時間がかかる場合があるとされます。
  • 住民税や社会保険料の負担は、休職中も基本的に続きます。
  • 残業代や賞与が減る影響は、傷病手当金の計算に十分反映されないことがあります。

また、自営業・フリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の仕組みがないとされます。世帯のどちらかが独立している場合、収入断絶のリスクは片側に大きく偏ります。詳細な条件は、加入している健康保険への確認が確実です。

共働きの平日タイムライン(朝・夜の山)
朝と夜に“山”がある一日(平日の一例)57911131517192123(時)家事育児仕事朝の山夜の山家事育児仕事手が足りない山場

※家庭ごとに大きく異なる一例です。山場の家事を前倒し・外注すると負荷が下がります。

出ていくお金——医療費には上限、周辺費用には上限がない

意外に思われるかもしれませんが、医療費そのものは公的制度がかなり守ってくれます。高額療養費制度により、1か月の医療費の自己負担には所得に応じた上限が設けられており、一般的な目安として月9万円前後、高所得の区分では月17万円前後とされます。健康保険組合によっては付加給付があり、実質負担がさらに低くなる場合もあるとされます。

一方で、制度の対象外となる費用には上限がありません。

  • 差額ベッド代——個室等を利用した場合、1日数千円程度からが目安とされます。1か月なら十数万円に達することもあります。
  • 入院中の食事代の一部、日用品、パジャマ等のレンタル費用。
  • 家族の見舞いや通院付き添いの交通費。

つまり「医療費が家計を壊す」というより、制度の外側にある細かな費用と、次に述べる家事の崩壊が家計を揺らす——これが共働き世帯における実際の構図に近いと考えられます。

誰も試算しない「家事崩壊」のコスト

入院シミュレーションで最も見落とされるのが、この部分です。共働きの家事・育児は二人で回すことを前提に設計されています。片方が抜けた瞬間、残された側には仕事・看病・全家事・全育児が同時に降りかかります。気力で乗り切れるのは最初の数日で、その先は外部の力を借りるのが現実的です。

外注した場合の規模感を、一般的な目安で見てみます。家事代行は1時間あたり3,000〜5,000円程度、ベビーシッターや病児保育にも相応の費用がかかるとされます。仮に週10時間の家事・育児を外注すれば、月に12〜20万円程度という計算になります。実際にここまで使うかどうかは別として、配偶者の家事労働はこの規模の経済価値を持っているということです。

もう一つの資源は、残された側の有給休暇と体力です。介護休暇や看護休暇など勤務先の制度がどこまで使えるか、平時に確認しておく価値があります。お金と制度で解決できる状態にしておくこと自体が、備えなのです。

モデル試算——1か月の入院で家計はいくら動くか

ここまでの要素を、1か月入院した場合のモデルとして一枚にまとめます。あくまで一般的な目安であり、実際の金額は所得区分・加入する健康保険・勤務先の制度によって大きく変わります。

項目内容1か月の目安
収入の減少給与→傷病手当金(額面の約3分の2)へ額面の約3分の1相当が減
医療費の自己負担高額療養費制度の適用後約9万〜17万円程度(所得区分による)
制度対象外の費用差額ベッド代・食事代・雑費など数万〜十数万円程度
家事・育児の外部化家事代行・シッター・病児保育など利用量により数万〜十数万円程度

合計すると、1か月で数十万円規模の変動があり得るというのが、この試算の骨格です。さらに傷病手当金の入金にはタイムラグがあるため、当面の立て替えは貯蓄が担うことになります。重要なのは正確な予言ではなく、「わが家ならどの項目がいくらになるか」を自分の条件で埋め直してみることです。

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備えは「現金・情報・体制」の三点で

試算ができたら、備えの優先順位はおのずと見えてきます。一般に、次の順で考えるのが合理的とされます。

  • 現金——生活費の6か月分程度を目安とする生活防衛資金。傷病手当金のタイムラグと制度対象外の費用を埋められるのは、流動性の高い現金だけです。
  • 情報——口座・保険証券・パスワード・学校や保育園の連絡先を夫婦で共有しておくこと。倒れた側にしか分からない情報は、有事にそのまま停止点になります。
  • 体制——家事代行や病児保育を平時に一度使い、登録と勝手を済ませておくこと。有事に初めて探すのと、慣れたサービスを呼ぶのとでは、負荷がまるで違います。
保険の見直しは、この三点の後で構いません。公的保障と貯蓄で吸収しきれない部分がどこかを試算で特定してから、必要な分だけを検討する——これが一般的な順序です。

保障内容の判断は個々の事情によるため、FPなど専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

夫婦のどちらかが倒れたとき、家計を揺らすのは医療費そのものではありません。医療費には公的制度という上限があります。守られていないのは、収入と、家事・育児という時間です。この二つが同時に止まることこそ、共働き世帯にとっての本当のリスクです。

幸い、その大部分は事前に数字にできます。傷病手当金の条件、高額療養費の自己負担上限、家事を外注した場合の費用——一つずつ自分の条件で確かめていけば、「先が見えない」という不安は「見積もり済みの課題」に変わります。

試算は健康なうちにしかできない備えです。この週末、お茶を一杯いれて、夫婦で一度この表を埋めてみてください。制度の詳細や個別の判断については、加入する健康保険・勤務先・FPなどの専門家への確認をあわせて。

今週末にできる「医療有事」の備え

  • 加入している健康保険の傷病手当金の条件と、付加給付の有無を確認する
  • 高額療養費制度における自分の所得区分と、月の自己負担上限の目安を調べる
  • 生活費6か月分を目安に、生活防衛資金の現在の残高を点検する
  • 家事・育児のタスクを書き出し、「片方が抜けたら外注でいくらか」を見積もる
  • 口座・保険・パスワード・園や学校の連絡先を夫婦で共有する
  • 家事代行や病児保育を平時に一度お試し利用し、登録を済ませておく

よくある質問

傷病手当金はいつから、どのくらい受け取れますか?

一般に、連続3日間の待期期間の後、4日目以降の休んだ日に対して給与(標準報酬)の約3分の2が支給され、期間は通算1年6か月までとされます。申請から振込までには時間がかかる場合があるため、当面は貯蓄でつなぐ想定が現実的です。正確な条件は加入している健康保険にご確認ください。

医療保険には入っておくべきでしょうか?

一般論としては、まず高額療養費制度などの公的保障と手元の貯蓄でどこまで吸収できるかを試算し、足りない部分だけを保険で補うという順序が合理的とされます。必要な保障額は世帯の状況により大きく異なるため、FPなど専門家への相談をおすすめします。

共働きの場合、夫婦どちらの備えを優先すべきですか?

収入の大きい側だけでなく、家事・育児の担い手としての比重も含めて両方を試算するのが一般的な考え方です。収入が少ない側でも、その人が担う家事・育児を外注すれば月十数万円規模になり得るため、どちらが倒れても家計は大きく動きます。

住宅ローンがある場合は何を確認すればよいですか?

一般に、団体信用生命保険(団信)の基本保障は死亡・高度障害が中心で、病気による長期入院や就業不能は疾病系の特約がなければ対象外の場合があるとされます。まずご自身の団信の保障範囲を契約書類や金融機関で確認し、不足があれば専門家と補い方を検討するのが一般的です。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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