
介護のための自宅改修、補助金と手すり・段差対策の進め方
この記事の要点
- 介護保険の住宅改修費は、対象工事に上限20万円。自己負担は原則1割(所得により2〜3割)なので、20万円の工事なら実費2万円ほどで済みます。
- 絶対に守るべきは「工事の前に申請する」こと。業者と契約して着工してから申請しても、原則1円も出ません。失敗の大半がここです。
- 対象は手すり・段差解消・滑りにくい床・引き戸・洋式便器など、本人の動作を直接支える工事だけ。見た目のリフォームや老朽化対策は対象外です。
- 遠方の親の家なら、業者選びが結果を左右します。「介護保険の住宅改修の実績」と「受領委任払い対応」を最初に聞いてください。
- 制度概要・金額は2024〜2025年時点の一般的な内容です。最新は市区町村の介護保険窓口・地域包括支援センターの公式情報、または専門家でご確認を。
あわてて工事を進めるより、「相談 → 事前申請 → 工事」の順番を守ること。それが結局いちばんの近道になります。
まず押さえる「住宅改修費」の全体像
親の家をどう整えるか。その相談で最初に知ってほしいのが、介護保険の住宅改修費の支給です。要介護・要支援の認定を受けた人が、自宅で安全に暮らし続けるための小さな改修をする際、費用の一部が介護保険から戻ってきます。
大枠はこの4つだけ覚えれば十分です。数字は2024〜2025年時点の一般的な制度として見てください。
| 項目 | 一般的な内容 |
|---|---|
| 支給限度額 | 対象工事費の合計で20万円が上限(生涯ベースで管理) |
| 自己負担 | 原則1割。所得に応じて2割または3割 |
| 対象者 | 要支援1・2、要介護1〜5の認定を受け、その住宅に住んでいる人 |
| 申請のタイミング | 工事の前(事前申請)が必須 |
20万円の対象工事で、自己負担1割なら実質2万円。この20万円は一度で使い切らなくてよく、手すりを先に、後でスロープを、と分けて使えます。さらに、要介護度が3段階以上重くなった場合や、引っ越した場合には、改めて20万円の枠が復活する例外もあります。該当しそうなら市区町村で確認してください。
※自治体・容体により手順や窓口名は異なります。まずはお住まいの地域包括支援センターへ。
対象になる工事・ならない工事
「この際だから家じゅうバリアフリーに」と考えがちですが、住宅改修費が認めるのは本人の動作を直接支える、ごく限られた工事だけです。対象になるのは次のものです。
- 手すりの取り付け(廊下、階段、トイレ、浴室、玄関。転倒防止・移動補助が目的のもの)
- 段差の解消(敷居の撤去、スロープの設置、浴室の床のかさ上げなど)
- 滑り防止・移動をしやすくする床材変更(畳から板やビニル床へ、浴室を滑りにくい床へ)
- 引き戸などへの扉の取り替え(開き戸を引き戸・折り戸へ。ドアノブの交換を含む場合も)
- 洋式便器への取り替え(和式から洋式へ。立ち座りを助ける目的のもの)
- 上記に付帯して必要な工事(手すりを付けるための壁の下地補強など)
逆に、つい頼みたくなるのに対象外になるものも知っておくと無駄がありません。新築・増築そのもの、見た目や老朽化対策が主目的のリフォーム、福祉用具で代わりがきくもの(取り外せる手すりや置くだけのスロープは、レンタル・購入の別制度の対象になることが多い)、高級設備にした差額分。これらは住宅改修費からは出ないのが普通です。
線引きは家ごとに微妙に変わります。「これは対象になるか」を判断するのは、次に出てくるケアマネジャーや専門職の仕事です。自己判断で工事を進める前に、必ず相談を一枚かませてください。
つまずかない申請の手順
住宅改修で最も多い失敗は、ひとつです。良かれと思って先に工事をしてしまい、一銭も支給されなかった。これを避けるには順番を守るしかありません。流れはこうです。
- ケアマネジャー(いなければ地域包括支援センター)に相談する。まだ認定を受けていないなら、要介護・要支援認定の申請から。ここが出発点です。
- 専門職と一緒に工事を決める。本人の動作と住まいを見たうえで、どこに何が要るかを整理。改修が必要な理由書はケアマネジャー等が作ります。
- 業者から見積もりを取る。工事の内容・箇所・金額がわかる書類をそろえます。
- 市区町村へ「事前申請」を出す。申請書、見積書、理由書、改修前の写真、所有者の承諾書(賃貸や本人名義でない場合)などが一般的に必要です。
- 承認が下りてから着工する。ここを待たずに始めると対象外になり得ます。連絡が来るまで動かない。
- 工事完了後、領収書と完成後の写真を添えて支給申請する。確認を経て、自己負担分を除いた額が振り込まれます。
支給のお金の流れには2通りあります。いったん全額を立て替えて後で払い戻される「償還払い」と、最初から自己負担分だけを業者に払えばいい「受領委任払い」。20万円の工事なら立て替え額の差は18万円。どちらが使えるかは自治体と業者で違うので、立て替えがきついなら受領委任払いに対応しているかを早めに確認しておくと楽です。
業者の選び方と見積もりの見方
遠方の親の家だと、自分が立ち会いにくいぶん業者選びが結果をそのまま決めます。次の4点で絞ると外しません。
- 介護保険の住宅改修に慣れているか。必要書類や写真、自治体とのやり取りに不慣れな業者だと、手続きで止まります。「住宅改修の実績は年に何件くらいか」と具体的に聞きましょう。
- 受領委任払いに対応しているか。立て替えを避けたいなら、ここがそのまま判断材料になります。
- 見積もりが工事ごとに分かれているか。「バリアフリー工事一式」はダメ。手すり◯本いくら、段差解消◯か所いくら、と項目別に金額が出ているものを。対象工事と対象外工事が混ざるとき、内訳がないと支給額の計算でもめます。
- 本人の動作を見て提案しているか。カタログを広げる業者ではなく、実際の歩き方・立ち座りを見て手すりの高さや位置を決める業者が信用できます。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに頼めば、地域で実績のある業者を紹介してもらえることもあります。相見積もりは2社ほど取り、金額だけでなく提案の中身を並べて比べてください。
補助金は重ねられる? 併用と上乗せの考え方
「20万円で足りるのか」という不安もよく聞きます。答えは、制度を組み合わせれば負担はもっと下げられる、です。使えるものを整理します。
- 自治体独自の住宅改修助成。市区町村によっては、介護保険の20万円とは別枠で上乗せや、対象外工事への助成があります。要支援・要介護の認定がなくても、高齢者向けに使える制度を持つ自治体もあります。まず自分の市区町村名で調べる価値があります。
- 福祉用具のレンタル・購入費の支給。取り外せる手すりや置き型スロープ、入浴・排せつの用具は、住宅改修ではなく福祉用具の制度で対応できます。工事と用具で役割を分けると、限られた20万円を工事に集中させられます。
- 税制上の取り扱い。一定のバリアフリー改修には、所得税の控除や固定資産税の軽減が用意されている場合があります。適用には要件があり年度で変わるので、税務署や自治体の窓口で確認を。
ただし、これらは併用できる場合もあれば、同じ工事には重ねて使えない場合もあります。「どの工事に、どの制度を当てるか」の設計を間違えると、片方が使えなくなります。順番はシンプルで、まず介護保険の枠で何ができるかをケアマネジャーと固め、そのうえで自治体窓口に「ほかに使える助成はないか」と直接聞く。これが一番取りこぼしません。

今日からできる最初の一歩
情報が多すぎて動けない、という人へ。この順でいけば迷いません。
- 親が要介護・要支援の認定を受けているか確認する。未認定なら、市区町村か地域包括支援センターで認定申請を相談する。
- 担当ケアマネジャー(いなければ地域包括支援センター)に「自宅改修を考えている」と伝え、相談の場をつくる。
- 本人がどの動作で困っているか(階段、トイレ、浴室、玄関)を、できれば実際に見て書き出す。
- 「事前申請が済むまで契約も着工もしない」と、家族の間で先に共有しておく。
住宅改修は、転倒という大きなリスクを、数万円の工事で確実に下げられる備えです。骨折からの寝たきりを考えれば、費用対効果はきわめて高い。あわてて工事を進めるより、「相談 → 事前申請 → 工事」の順番を守ること。それが結局いちばんの近道になります。住まいやお金まわりを丸ごと見直したいときは、無料診断も使ってください。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の医療・税務・法務上の判断に代わるものではありません。制度の適用可否や最新の金額・要件は、お住まいの市区町村の介護保険窓口、地域包括支援センター、税務署などの公式情報、または専門家にご確認ください。
自宅改修でつまずかないための確認リスト
- 親が要介護・要支援の認定を受けているか確認し、未認定ならまず認定申請を相談する
- 工事の前に必ず市区町村へ事前申請を出し、承認が下りてから着工する
- ケアマネジャーや専門職と一緒に、本人の動作を見て改修箇所を決める
- 業者には住宅改修の実績と受領委任払いへの対応を最初に確認する
- 見積もりは工事ごとの項目別に出してもらい、相見積もりを2社ほど取る
- 自治体独自の助成や福祉用具の制度も窓口で確認し、どの工事にどの制度を当てるか設計する
よくある質問
介護のための自宅改修に、補助金や助成は受けられますか
介護保険には、手すりの設置や段差解消などを対象とする住宅改修費の支給制度が一般に設けられています。要介護・要支援の認定が前提となり、支給限度額や対象工事には条件があります。自治体独自の助成が併用できる場合もありますので、最新の要件は各市区町村やケアマネジャーへご確認ください。
改修費はいったん全額立て替える必要がありますか
介護保険の住宅改修費は、一般に利用者がいったん全額を支払い、後から払い戻しを受ける償還払いが基本とされています。自治体によっては自己負担分のみを支払う受領委任払いに対応する例もあります。手続きの順序や必要書類は事前申請が原則ですので、着工前に窓口へご相談ください。
工事の前に必ずやっておくべきことは何ですか
介護保険を利用する場合、工事前の事前申請が一般に必須とされ、これを欠くと支給対象外となる恐れがあります。まずはケアマネジャーへ相談し、本人の身体状況に合った計画を立てることが大切です。複数業者から見積もりを取り、手すりの位置や段差の高さを実際の動線で確認なさることをおすすめします。
手すりや段差対策はどこから優先して進めるべきですか
一般に、転倒の危険が高い玄関・階段・浴室・トイレ・廊下が優先度の高い場所とされています。ただし最適な対策は本人の歩行能力や生活動線によって異なります。理学療法士やケアマネジャー、福祉用具の専門職に相談し、将来の身体変化も見据えて段階的に整えていく視点が役立ちます。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)