介護・ダブルケアのイメージ

介護・ダブルケア

親に介護が必要になったら、最初の1週間でやること順序

この記事の要点

  • 介護の初動でまず電話する相手は、親族でも病院の主治医でもなく、親の住む市区町村にある地域包括支援センター。ここが全体の司令塔になる。
  • 公的サービスの起点は要介護認定の申請。結果が出るまで1か月前後かかるので、「必要かも」と思った日に動く。
  • 病院から退院を急かされても、受け入れ態勢ができる前に連れ帰らない。退院前カンファレンスを必ず要求する。
  • 親の通帳・保険証券・かかりつけ医を1枚にまとめる。これをやるかどうかで、その後の手続きの消耗度が変わる。
  • 追い詰められても離職は最後の手段。先に介護休業・介護休暇を使う。法律で保障された権利で、辞めてから後悔する人が多い。
最初の一週間で本当に効くのは三つだけだ——一人で抱えない。相談相手を早く持つ。辞表は最後まで書かない。

親の介護は、たいてい前触れなく始まる。台所で転んで大腿骨を折った。脳梗塞で救急搬送された。あるいは遠くの実家から「最近ちょっとおかしい」という電話が一本。心の準備がないまま、病院と役所から次々に判断を迫られる。何から手をつければいいのか分からなくなるのは、あなたの段取りが悪いからではない。ほぼ全員がここでつまずく。

初動でやるべきことには順番がある。最初に正しく動けば、その後が驚くほど軽くなる。この記事は最初の1週間を日ごとに区切り、その日に何をするかだけを書く。読み終えたとき、明日の朝いちばんにかける電話が決まっているはずだ。

1〜2日目:命の安全と、情報を1か所に

最初の48時間でやることは二つだけ。親の安全の確保情報の集約。緊急入院しているなら、医療の判断は病院に任せていい。家族側は「これから動くための土台」を作ることに集中する。

連絡先を1枚にまとめる

紙でもスマホのメモでもいい。きょうだいや配偶者と共有できる形にしておく。あなたが仕事で動けない日に、別の誰かが代われる。それが効く。

  • 入院先の病院名・病棟・担当看護師、そして医療相談室(医療ソーシャルワーカー)の番号。この人が退院後の調整の鍵になる
  • かかりつけ医と、いま飲んでいる薬(お薬手帳は中身を写真に撮る)
  • 親が住む市区町村の地域包括支援センターの電話番号(「○○市 地域包括支援センター」で検索)
  • きょうだい・親族の連絡先と、誰が何を担えるか

お金と書類の在りかを押さえる

介護は必ずお金の話になる。親の頭がはっきりしているうち、あるいは家族で手分けして、次の在りかを確認しておく。ここを後回しにすると、いざというとき手続きが止まる。

  • 通帳・キャッシュカード・年金の振込口座
  • 健康保険証、介護保険証(65歳以上に交付済み)、マイナンバーカード
  • 生命保険・医療保険・民間介護保険の証券
  • 持ち家か賃貸か、住まいに関する書類一式

ここで一つ釘を刺しておく。親が認知症などで判断できなくなると、家族であっても口座からお金を引き出せなくなることがある。いわゆる口座凍結だ。本人が動けるうちに一緒に整理しておくこと。これは早ければ早いほどいい。

介護が始まった最初の1週間でやること
最初の1週間で踏む5つのステップあわてず、上流の窓口から順に。連絡先を押さえる主治医・親族・お金の在り処地域包括に相談高齢者の総合相談窓口へ要介護認定を申請市区町村の窓口で手続きケアマネ/サービス選定ケアプランを一緒に作るお金と仕事の段取り介護休業・費用の見通し

※自治体・容体により手順や窓口名は異なります。まずはお住まいの地域包括支援センターへ。

3日目:地域包括支援センターに電話する

初動で一番効く一手がこれだ。地域包括支援センターは市区町村が設置する高齢者支援の総合窓口で、介護の駆け込み寺。無料で、何も決まっていない段階で電話していい。むしろ何も決まっていないうちに電話するための場所だ。

切り出し方はこれで十分。「親が入院していて、退院後の生活が不安です。何から始めればいいですか」。この一言で、保健師や社会福祉士、ケアマネジャーが次の手を一緒に整理してくれる。次に説明する要介護認定の申請も、ここで案内される。

どこのセンターか分からないときは、親の住む役所の「高齢福祉課」か「介護保険課」に電話すれば、担当地域のセンターを教えてくれる。

あなたが遠方で、電話だけでは心もとないこともある。それでもまず電話から。状況を伝えれば、本人と家族の事情に合わせた支援につないでくれる。

4〜5日目:要介護認定を申請する

訪問介護、デイサービス、福祉用具のレンタル、施設入所——こうした公的サービスを1〜3割の自己負担で使うには、要介護認定がいる。どのくらい介護が必要かを公的に判定する手続きで、すべてのサービスの入り口だ。これを通さないと、原則として何も始まらない。

申請の流れ

  1. 申請:市区町村の窓口、または地域包括支援センターで。本人・家族のほか、センターに代行してもらってもいい。
  2. 訪問調査:調査員が自宅や入院先に来て心身の状態を確認する。ここで見栄を張らないこと。「これもできる、あれもできる」と多めに答えると、必要な支援が下りてこない。普段のいちばん悪い日を基準に、正直に伝える。
  3. 主治医意見書:市区町村がかかりつけ医に医学的な意見書を依頼する。
  4. 審査・判定:調査結果と意見書をもとに、要支援1〜2・要介護1〜5の区分が決まる。

申請から結果まで、原則1か月程度を見ておく。だから「必要かもしれない」と感じた日が申請日だ。迷っている数日が、後で効いてくる。なお認定の効力は申請日にさかのぼるので、結果を待つ間に暫定でサービスを使える場合がある。これも地域包括支援センターかケアマネジャーに相談すればいい。

要介護と認定されるとケアマネジャー(介護支援専門員)が付き、サービスの計画(ケアプラン)を一緒に作っていく。ここでようやく、家族が一人で抱える段階から、専門職とチームで動く段階に切り替わる。この切り替えを早く起こすことが、初動の目的そのものだ。

6〜7日目:退院後の住まいと、仕事の段取り

入院しているなら、退院の話は思ったより早く来る。回復期の病床には在院日数の目安があり、病院は次の患者のために退院を促してくる。ここで焦って連れ帰ると、態勢が整わないまま家族が潰れる。退院日に対して受け身になりすぎないこと。

退院前カンファレンスを要求する

退院前に退院前カンファレンス(医師・看護師・医療ソーシャルワーカー・本人・家族が集まる話し合い)を開いてもらえないか、病院に頼む。遠慮はいらない。退院後にどんな状態が想定され、どんなサービスや住環境の手当てがいるかを、専門職と一緒に詰められる場だ。退院日が一方的に決まってしまう前に、この場をねじ込む。

退院後の置き場所を決める

退院後の選択肢はおおむね次の三つ。どれが正解かは、本人の状態・本人の希望・あなたの家庭の事情で変わる。共働きで自宅介護を担い切れないなら、無理に自宅にこだわらず老健などを挟むのが現実的だ。

選択肢向いている状況主な相談先
自宅+在宅サービス本人が自宅を望み、訪問・通所で支えられるケアマネジャー
一時的な施設(老健など)退院直後でリハビリや見守りが必要医療ソーシャルワーカー
介護施設への入所在宅が難しく、継続的な介護が必要地域包括支援センター・ケアマネジャー

辞表を書く前に、制度を確認する

時間に余裕のない共働き世帯ほど、初動で「仕事を辞めるしかないのか」と追い詰められる。はっきり言う。離職は最後の手段だ。介護離職をした人の多くが、収入も社会的なつながりも失い、それでも介護が楽にならず後悔している。辞める前に、次の二つを使う。どちらも法律で保障された、働く人の権利だ。

  • 介護休業:対象家族一人につき通算で一定日数(一般に93日)まで、複数回に分けて休める。要件を満たせば雇用保険から給付金が出る場合がある。
  • 介護休暇:通院の付き添いや手続きなど、短時間・短期のために取る休暇。半日・時間単位で使える運用も増えている。

勘違いされやすいが、介護休業は「自分が付きっきりで世話をするための休み」ではない。介護の体制を組み上げるための時間と捉えるのが正しい。この93日で認定申請とケアプラン作りを片づけ、仕事と両立できる形に持っていく。勤務先の人事・総務にも早めに相談しておくこと。言いにくくても、黙って抱えるより制度を使ったほうが、結局は会社にも自分にも得だ。

あわせて押さえておく制度

初動を越えたら、次の制度も頭の隅に置いておく。いずれも黙っていては下りてこない。申請して初めて使えるものばかりだ。

  • 高額介護サービス費:介護サービスの自己負担が月の上限を超えたとき、超過分が払い戻される。
  • 高額医療・高額介護合算制度:医療費と介護費の年間負担が重い世帯の負担を軽くする。医療と介護の両方がかさむ家ほど効く。
  • 住宅改修・福祉用具:手すりの設置や段差解消などに、要件を満たせば補助が出る場合がある。

制度の名称・対象・金額や日数は、自治体や法改正で変わる。ここに挙げた数値や枠組みは2024〜2025年時点の一般的な内容を前提にしている。最新の正確な情報は、市区町村の公式窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーなど専門家に必ず確認してほしい。

退院前カンファレンスで話し合う家族
退院前カンファレンスで話し合う家族

最初の1週間を、一枚で

迷ったらここに戻ってくればいい。

  1. 1〜2日目:親の安全を確保し、連絡先・お金・書類を1か所に集める。
  2. 3日目:地域包括支援センターに電話し、相談相手を確保する。
  3. 4〜5日目:要介護認定を申請する(結果まで1か月前後)。
  4. 6〜7日目:退院前カンファレンスをねじ込み、住まいと仕事(介護休業・介護休暇)の段取りを決める。

全部を完璧にやる必要はない。最初の一週間で本当に効くのは三つだけだ——一人で抱えない。相談相手を早く持つ。辞表は最後まで書かない。地域包括支援センターという司令塔につながれば、その先は専門職と一緒に進められる。今日できる一歩を一つだけ選んで、電話をかけるところから始めてほしい。

介護が始まった最初の1週間で動くことチェック

  • 親の安全を確保し、連絡先・お金・書類を1か所に集約
  • 親の住む市区町村の地域包括支援センターに電話して相談相手を確保
  • 市区町村窓口または包括センターで要介護認定を申請
  • 退院前カンファレンスの開催を病院に依頼
  • 退院後の置き場所(自宅・老健・施設)を相談先と検討
  • 離職の前に介護休業・介護休暇を勤務先へ相談

よくある質問

親に介護が必要になったら、まず誰に相談すればよいですか。

一般に、最初の窓口は親の住む市区町村の地域包括支援センターとされています。介護・医療・生活の総合相談に無料で応じ、要介護認定の申請も案内してくれます。まずは現状を整理し、ここへ連絡することが最初の一歩になります。お住まいの担当区域は自治体の公式情報でご確認ください。

要介護認定の申請から介護サービス開始まで、どのくらいかかりますか。

一般に、申請から認定結果の通知までは一か月程度を要するとされています。ただし急を要する場合は、認定前から暫定的にサービスを利用できる仕組みもあります。具体的な期間や手続きは地域や状況で異なるため、最新の取り扱いは自治体やケアマネジャーへご確認ください。

仕事を続けながら介護の体制を整えることはできますか。

一般に、介護休業や介護休暇など仕事と介護の両立を支える制度が法律上設けられています。日数や対象の要件は定められており、勤務先の規定も関わります。離職を急がず、まずは制度の活用と外部サービスの組み合わせをご検討ください。詳細は勤務先や専門家へご確認ください。

離れて暮らす親の介護は、最初の一週間で何を優先すべきですか。

一般に、まず親の心身の状態と生活・金銭面の現状把握、次に地域包括支援センターへの相談、かかりつけ医との情報共有が優先されます。これらは一般的な情報であり医師の診断に代わるものではありません。緊急性のある症状がある場合は速やかに医療機関へご相談ください。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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