
共働きの住宅ローン控除、合計所得2000万円超で控除ゼロになる落とし穴
この記事の要点
- 住宅ローン控除には「その年の合計所得金額が2000万円以下」という所得要件があり、超えた年は控除がゼロになる。残高があっても、入居年数の条件を満たしていても、所得要件だけで一発アウト。
- 判定は世帯合算ではなく、控除を受けている本人ひとりずつ。超えるのは「その年だけ」で、翌年下回れば復活する。ただし超えた年は取り戻せない。
- 基準は年収(額面)ではなく給与所得控除を引いた後の合計所得金額。給与だけなら年収おおむね2195万円が境目だが、配当や譲渡益があると境目は下がる。
- 昇給・大型賞与・RSUのベスティング・株売却益が引き金になりやすい。住宅取得直後の数年とキャリアの伸び盛りが重なると、最も触れやすい。
- ペアローンで所得の高い側に控除を寄せすぎていると、その人が超えた年に世帯の控除メリットが大きく欠ける。配分はそこまで見て決める。
超えた年は戻らない。でも読めていれば、慌てる場面ではありません。
「ローンを組めば毎年もらえる」は、高所得世帯では崩れる
住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて所得税が軽くなる、住宅取得後の家計を支える代表格です。たいていの人は「ローンがある限り毎年受けられるもの」と思っています。年収1000万円台までは、その理解で実害はありません。
崩れるのは、所得が一段上のレンジに入ったときです。控除には所得の上限があり、それが「その年の合計所得金額が2000万円以下であること」。このラインを超えた年は、控除を一円も受けられません。ローン残高がいくら残っていようと、入居からの年数が条件内だろうと、所得要件ひとつで対象から外れます。
そして厄介なのは、判定が「その年ごと」に行われる点です。前年まで普通に受けられていても、ある一年だけ所得が跳ねれば、その年の控除はゼロ。翌年2000万円以下に戻れば、また受けられます。永久失格ではない。けれど超えた年の分は戻ってこない。知らずに迎えると、まるまる一年分を取りこぼします。
※一般的な目安です。最新の制度・数値・個別事情は必ずご確認ください。
都心の共働きで、これは「いつか」ではなく「数年内」の話
引き金になるのは、所得が大きく動く年です。都心で働く共働きには、その動きが集中して起きます。
- 役職が上がって、ベース給与が一段ジャンプした
- 業績連動の賞与が、想定を超えて厚く出た
- 外資やスタートアップで付与されたRSU(譲渡制限付株式)のベスティングが到来し、その時価が給与所得として課税された
- ストックオプションや持株会の株を売り、譲渡益が出た
とりわけRSUが落とし穴です。権利確定の時点で、株式の時価がそのまま収入として扱われる。手元に現金は入っていない感覚でも、所得は確実に積み上がっています。株価が上がっている局面なら、想定の倍が一気に乗ることすらある。住宅を買った直後の数年は、昇進・賞与・RSUの確定がいちばん重なりやすい時期です。「家を買えた=年収が伸びている」のだから、上限に触れるのは偶然ではなく、むしろ自然な成り行きだと考えておいたほうがいい。
判定は「世帯合算」ではない。ここが共働きの肝
共働きにとって、ここが最重要です。2000万円の判定は、世帯の合計ではなく、控除を受けている個人それぞれで行われます。
夫婦の所得を足して2000万円を超えても、それ自体は何の問題でもありません。問われるのは、控除を受けている本人の所得が2000万円を超えたかどうか、ただ一点。ペアローンや連帯債務で夫婦が各自の分を受けているなら、片方が超えても止まるのはその人の控除だけ。もう片方は通常どおり受け続けます。
逆に言えば、所得の高い側に借入も控除も寄せている設計は危ない。その人が超えた年、世帯全体の控除メリットがごっそり欠けます。所得が拮抗している夫婦なら、あえて両方に分けておくほうが、片方が跳ねた年の取りこぼしを小さくできる。誰がどれだけ控除を受けていて、誰が上限に近いか。この組み合わせを先に把握しておくことが、配分を誤らない前提です。
借入と控除を夫婦でどう割るかは、それだけで一本の判断です。無料のペアローン診断で、自分たちの場合の目安を確認できます。
「年収2000万円」と思っていると外す
もうひとつ。基準は年収(額面)ではなく合計所得金額です。給与なら、額面からまず給与所得控除を引いた後の額が給与所得になり、その合計で判定します。
給与収入だけの人なら、給与所得控除を踏まえて年収おおむね2195万円が上限に対応する目安です(給与所得控除の上限を前提にした概算)。だから「額面はまだ2000万円に届いていないから平気」という安心は、半分しか合っていません。
これは「給与だけ」の場合の話だからです。賃料収入、配当、株式の譲渡益。給与以外の所得が乗れば、その分だけ境目の年収は下がります。額面1900万円でも、副収入を足したら合計所得が2000万円を超えていた——配当や売却益が出た年に、実際に起こります。給与明細だけ眺めていると見えない超過です。
| こう思っていると | 実際はこう |
|---|---|
| 世帯の合計所得で判定される | 控除を受ける本人ごとに判定される |
| 年収(額面)2000万円が基準 | 給与所得控除などを引いた後の合計所得金額が基準 |
| 一度超えると以後ずっと受けられない | その年だけ対象外。翌年下回れば復活する |
| 給与だけ見ていればよい | 配当・譲渡益・賃料などの副収入も合算される |
制度は変えられない。だが「超える年」は読める
上限そのものはどうにもなりません。けれど、超えそうな年を先に見通して身構えることはできます。やることは四つ。
- RSUと賞与の見込みを、年初に年単位で並べる。ベスティングの予定と賞与の水準を年の頭で押さえれば、「今年は超えそうか」の見当がつきます。家計の予定表に、所得の山を一本書き足す感覚で。
- 夫婦のどちらが上限に近いかを確定させる。本人ごとの判定なので、所得の高い側が超えやすいなら、その人の控除が止まる年がある前提で組む。慌てないための前提づくりです。
- 株の売却タイミングを所得カレンダーに乗せる。大きな譲渡益はそれだけで合計所得を押し上げる。すでに所得が高い年に重ねると、控除を丸ごと飛ばしかねない。実現する年を選べるなら、控除への影響まで見て決める。
- 借入・控除の配分は数年スパンで決める。目先の控除額だけで高所得側に寄せない。今後数年で所得がどう動くかを踏まえて、夫婦の借入比率を決めるほうが、トータルの取りこぼしは小さくなります。
最適解は所得状況や保有資産で変わります。本記事は一般的な制度の整理であり、具体的な試算や個別の判断は税理士など専門家へ。当サイトの情報は、相談の前に全体像をつかむための材料としてお使いください。

まとめ
住宅ローン控除は、高所得世帯ほど「いつでももらえる」前提が崩れる制度です。合計所得2000万円の上限は世帯ではなく個人ごと。昇給・賞与・RSUで、一時的に超える年が必ず出てきます。超えた年は戻らない。でも読めていれば、慌てる場面ではありません。夫婦のどちらが上限に近いかを把握し、所得が跳ねる年を先に見ておく。配分はその上で決める。それが、共働きがこの制度と長く付き合うための一手目です。
本記事は2024〜2025年時点の一般的な制度内容に基づきます。要件や数値は改正で変わるため、最新は国税庁などの公式情報・専門家でご確認ください。
控除を取りこぼさないための確認リスト
- RSUのベスティング予定と賞与の水準を年初に年単位で並べ、超えそうな年を見当づける
- 夫婦のどちらが合計所得2000万円の上限に近いかを確定させ、その人の控除が止まる年を前提に組む
- 株の売却タイミングを所得カレンダーに乗せ、すでに所得が高い年に譲渡益を重ねない
- 給与の額面だけでなく、配当・譲渡益・賃料などの副収入も合算して合計所得を確認する
- 借入・控除の配分は目先の額だけで高所得側に寄せず、数年スパンで決める
よくある質問
住宅ローン控除は合計所得2000万円を超えると本当に受けられなくなるのですか
一般に住宅ローン控除には合計所得金額の上限が設けられており、これを超える年は控除を受けられないとされています。共働きで一方の所得が伸びた年に上限を超える例が見られます。上限額は改正で変わるため、最新は国税庁の公式情報や税理士へご確認ください。
夫婦のどちらの所得で判定されるのですか。世帯合算ですか
住宅ローン控除は契約者・債務者である個人ごとに判定されるのが一般的で、世帯合算ではないとされています。ペアローンや連帯債務では各人がそれぞれの持分・所得で判定されます。具体的な適用関係は専門家へのご確認をおすすめいたします。
上限を超えて控除がゼロになった年でも、翌年以降は再び受けられますか
一般に住宅ローン控除は各年ごとに要件を満たすかで判定されるため、上限を超えた年に受けられなくても、翌年に所得が下がり要件を満たせば再び対象になり得るとされています。年単位での判定となる点にご留意ください。
控除がゼロになるのを避けるために、共働き夫婦ができる備えはありますか
一般論として、ペアローンや連帯債務での借り方、持分割合の設計、控除を受けやすい側への配分などが検討材料になるとされています。ただし最適解は所得や物件で異なり、契約後の変更は難しいため、購入前にFPや税理士へご相談ください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)